華やかな大通りの 棄てられた蝙蝠傘の下 草臥れた尻尾上げて 毛繕う黒猫在りました 「ちょいと道往く其処の御嬢さん、御出で此処らで一つ話ましょう」 猫は云う「今日の噺は、そうだ昔に路端で聞いた愉快な悲恋など」...
時計は予定を追い越し 君まだ来ないのですか? 空は暗く沈んでく...
赤と白の猫が鳴く 誰にも知られずニャアニャアと 僕は何か探してる 空は鈍色(にびいろ)に滲んでく...
今日は卒業式 信じたものが消えていく さようならに興味はない 電車を待ってると...
路地裏猫の正体を そっと君に渡したいのさ 君が消えたあの日に 私 人じゃなくなっていた 誰の声も届かない それは わかりきったことだった 月夜に染み込んでいくような 優しさがあった...
横断歩道を渡る時は 必ず 右を見て 左を見て もう一度 右を見て下さい クルマが来ない事を確認したら...
毎日小石を蹴っている から 靴のつま先がすぐ減るよ 毎日すり減るつま先見ていて 首と背中が猫になる (にゃー) アスファルトの割れ目の 形と位置を ぼくがいちばん よくよく...
退屈を持てあましダイヴするベッドのなか 首筋に赤を散らしながら 熱情を弄ぶ ナイーヴな色が見えたら...
薄青色 の 空と眠る 火星の石 バスの屋根 の 上で踊る風が 笑った...
甘い香の水で顔洗い 閉じた廓(くるわ)で肌汚して 襖(ふすま)閉め影が嗤(わら)う 誰も帰してはいけない、と...