心を曇らす雨が降ると甦る ここでお別れをしたこと そして約束のこと 繋がりは頬に添えた指先...
呼んでいる 坂 呼んでいる 墜(つい)の曲線 呼んでいる 奥 呼んでいる 墨で潰して...
手を差し出したら 降る露に触れた 薄紅の許で交わしたゆびきり 枝の隙間から覗いたまるいまるいお月様...
逃げていく 理由なんてないけど 飾られた蝶の写し身で 過去が傷つき喚いていたから...
篝火(かがりび)灯して 虫の羽音 鈴の音 輪を囲む童(わらべ) 今宵祭りの日か 人も妖(あやかし)も境界もぼやけては 盃(さかずき)交わして 囃子(はやし)と肴(さかな)に...
土に積もる紫の煌き。 傾くは経過して古びたせい。 雨が洗い去るよ。 哀しさの下に。...
さらさらと鳴くのは枝別る帰花刻の宵のこと 帳の外 招かれざる子と交わした印を だから憶えている 澱の底 瑕が疼いて 声も姿も感触さえも 忘れかけては出でる...