首輪が好きなのね わたしにつけて あなたはわたしの 飼い主なんでしょう? 食べさせてくれるの バームクーヘン おなか空かせたまま 一人にしないで...
目が覚めて伝わる 色艶の無い温度 立ち上がろうとして崩れていく砂の足 海のような群青漂って...
光横たえる海神 創痕の間に揺らめく過ち 浮上して息を継ぎ 溶かされ混じるだけの憎愛を手にした...
晩夏の香り綴じる 薄い紙をなぞって 想い馳せる記録の束 甘い毒が腕に絡む...
痛くないように やさしく殺(あや)めた 言葉に置き換えて 悲しみを忘れた ああ いま 何をなくしたのだろう ツミという音のならびから 思い描かれた...
まぶたの裏に浮かんで消える いつかどこかの光景 数えきれない夜を過ごして たったひとつの朝を待つ 無限につづく迷路のなかで 覚めない夢をみていた あらがえない いくつもの悲しみに なき疲れたうつせみ...
足元をみたす暗い海と ひとみに映るまぶしい空と 悲しみの数を刻み込むような その爪痕だけを覚えている やわらかな胸元にひとつまたひとつ あざやかな花が咲き始める 根は深く骨を断ち 熱を奪ってゆく 花びらは終わりを知らせる...
あなたの亡骸に土をかける それが禁じられていたとしても 純粋なまなざしの快楽には 隠しきれない誘惑があった...