照らしはすれど暖めることのない 崇高な月の光をこの胸に 見上げた夕さりの空をきわやかに分かち聳える無骨の塔...
煤煙燻る夜汽車につゆ揺られて、辿り着いたは無人境 憂き身に独り沈む私をもっと寂しがらせよ閑古鳥 繙き、読み解きまた繰る頁...
絡繰りの天使たち 空想のティーカップ 真鍮の騎兵隊...
淡い淡い海鳴りの底、群立つイルカの呼気さながらに 溶けた瑠璃色の泪、視界が滲む 爛漫敷き詰めた青と青、世界は止め処もなく美しく...
異国の街のあなたに向けて 紙の飛行機、海に浮かべる 知らない街のあなたに向けて 送電線に手紙をくくる 行き場所のないあなたに向けて 一握の砂、小瓶に詰める...
暮れ行き泥(なず)む斜陽と影 茹だる海の火照り尾を引いて 我儘、気儘、波を辷る 酔いどれ帆船の舵をとれ...
貝殻に包まれて生まれ落ちた私たちは 大切に守られて、閉塞感で死んでく "現在"だけを生きてたいな、あの泳ぐ魚のように...
酔狂、積みに積んでレッツゴオ 蒙昧、絵に描いた頓痴気な世界で 巫山戯て、戯け、パッパラッパ 白痴をぶら下げて練り歩く 醜態、晒したってオオライ 後悔存ぜぬと道楽御一行 手練手管でパッパパッパ 遊惰を引き連れて徒然、道連れ...
朝霧閉ざす往来 青ざめた空 神様より早く起きた 朧に眠るのろくさ気だるい街に ノイズ混じりハレの予報...
寄る辺のない孤独な旋律はたおやかに谺(こだま)する夜の声と消え 幸福はアイスのように溶け落ちて 少女は淡い本の上で踊る...