マーマレードの空仰いで とけていく魚は蜂になったから やわらかな秒針は やわらかな時を刻んでいく...
相槌に 赤い糸を引かれて 空想に 想う空は開いた 右腕を 夢見た受精卵は モノクロの 背景にひとつ点を打つ...
振り返るほど艶やかな 朱色に濡れた唇と 乙女のように散らされた 頬の紅葉に爪立てて...
ディスプレイの映し出す砂嵐が 予見されたオワリの ハジマリを示す 落ち窪んだ空に穿たれた穴は ただ深く、暗く、黒く、皮肉にも美しく...
沙漠に 埋もれていた 歪んだ 黒い卵 手にした その瞬間に 罅(ひび)割れ 機械仕掛けの神を弑逆(しいぎゃく)した...
皮膚の下で蠢(うごめ)く 無数の蟲(むし)が 爪を剥がして外へ 這い出して行く 原色に染め上げた ビルの谷間を 理由も思い出せず 走り抜けて...
肺を突き破る 白い衝動 濡れたアカシアが 風に震える 歪み ひび割れた 赤い真円が 紙を抜け出して 螺旋を描く...
花瓶を手に取り 空に投げつけた 弾けた雫が 頬にうすく線を描く 僕にできるのは 君の横顔を...
夕陽に続く道を見つけて 足早に僕の手を引いたり 祭の気配に気を逸らせ 下足場で裾を踏みつけたり 一枚の毛布にくるまって 一晩中星を眺めたり 濡れたからもういいと笑って 水溜りの上ではしゃいだり...
あなたが手紙を読む前に、僕は死んでいるでしょう 三日後 それは決して避けられない未来なのです 僕とてそれを望んでいるわけではありません...